180915 欅坂の個別握手会に行ったはなし


今日初めて握手会に行った。欅坂46の7thシングル「アンビバレント」の個別握手会。

私は長野に住んでるから、なんなら幕張メッセに行くのも初めてだった。幕張メッセまで駅からそこそこ歩く事を知った。海浜幕張駅のホームに降りた時、前にいたおじさんの斜め掛けバッグにドナルドダックのサインが書かれていた。ここら辺の人は気軽にディズニーに行けるんだろうな。朝出かける時は地元が土砂降りだったのでビニール傘を片手に持って歩いたのだけど、都会の人は持ってない人の方が多くて(それでも午前中は雨の予報だったし、小雨は降ってた)みんなどうやって雨を凌いでるのか不思議。

握手をするたった数秒のために千葉に行くのか、と自分も自重気味に思ってたし、きっと友達や身近な人に話したら馬鹿にされると思って、なんとなく言えなかった。

(私に欅坂を勧めた友達に告げたら「自分は推しの目に映りたくないから」と言われた。言いたいことはよくわかる)

高速バスに乗って(秋の三連休初日の雨で案の定中央道は渋滞が発生してた)握手会とは全く関係ないお芝居を観劇してから幕張に向かった。お芝居を観に行く日と握手会の日程がかぶらないと多分行くことはなかったと思う。

私が今回握手してもらう女の子は齋藤冬優花ちゃんで、あだ名はふーちゃん。メンバーの中では比較的人気がなくて、一番後ろの列の左から二番目でダンスをしてる事が多い子。disってる訳じゃなくて事実だから仕方ない。


私は欅坂について詳しく知る前までは"スカートの裾が同じ高さに調節してある"というTwitterからの知識と紅白で見た負のオーラを纏った激しいダンスと「僕は嫌だ」だけで、友達に勧められない限りはきっと一生深く知ろうとは思わなかったと思う。仕事の人間関係がうまくいかなくてボロボロになって、愚痴を聞いてもらっていたカフェで友達に「何か気晴らしになるお勧めってない?」と聞いた時に欅坂を勧められた。その時にスマホで歴代のPVを一緒に見た。wifiに繋げてない状態だったから、明日から通信制限かかるんじゃないかって心配しながら。

「このセンターの子がてちって言ってね、最年少なんだよ、かっこいいよね」とスマホに映る一回り近く歳下の女の子について目をキラキラして話しかけてくるから、こんな厨二病みたいな曲この歳でよく好きになるよねと言いそうになったのを飲み込んで「私が中高生だったら多分好きになってたと思う」と口にした。

私が中高生だった頃、AKBの天下だった。あっちゃん、優子ちゃん、たかみな、まゆゆ、麻里子様、ともちん、こじはる。神7の名前はきちんと覚えてるし、文化祭は彼女たちのダンスを踊った事もある。「増田有華 現在」とか「宮澤佐江 現在」とか「河西智美 現在」とか検索かけるくらいには気にかけてる。幸せに生きていてくれたら、それでいい。きっといろんな人と恋をして素敵な女性になってるんだろうな。

「今はもうAKBよりも乃木坂の方が人気だし、一番勢いがあるのは欅坂なんだよ」と友達は言っていた。どうしてそんなに詳しいの、と困惑すると彼女は「家族が好きだから」と微笑んでいた。

「デビュー曲がサイレントマジョリティーって言って、"自分らしく生きる、大人たちに支配されない"って歌ってる曲なんだけど、歌ってる彼女たちが一番大人に支配されてるのに?って思ったんだけど、かっこいい女の子ってやっぱいいよね」「てちが不安定になっちゃって、紅白とか見てて可哀想だった」「欅坂はアイドルって言うより、アーティスト」「熱愛報道で休養中のメンバーが居るんだけど、アイドルって言うかアーティストだから、休養なんか全然しなくていいのに」「ライブがあったら一緒に行こうね」

友達がいつかあるかもしれない未来の話をしてくれたからなのか、少しだけ気が楽になって、その時は涙を拭きながらゆっくりと頷いた。


私がふーちゃんの事を気にしたのは、彼女たちの冠番組である"欅って書けない"がYouTubeのお勧め動画に出てきて、そのまま流れで見てたときのこと。地元である長野県では放送されてない番組。友達との会話で番組の存在を知ってはいたけれど、私も大人なので違法アップロードはなるべく見ないようにしてたけれども、その時はつい見てしまった。

シングルの選抜メンバーの発表の回。何のシングルのだったかはよく覚えてない。21人全員選抜とはいえ、みんな固い表情で、自分の名前がいつ呼ばれるかじっと怯えたようなこわばった顔で席で待ってた。ふーちゃんはすぐに呼ばれた。固い表情のまま、指定された位置に移動してた。

どこの世界にも競争はつきもので、芸能界という煌びやかな世界ならより激しい事だろう。その競争の中にいるその子に興味を持った。

みんな大好きグーグル先生に齋藤冬優花ちゃんについて聞いたら、関連キーワードが悪口のようなもので眉をひそめた。

"さいとうふゆか 不人気""さいとうふゆか 嫌い""齋藤不愉快""

基本的に関連キーワードはネガティブなものが多い傾向にあるとはいえ、齋藤不愉快はただの悪口じゃん。ないわ。

どうやら彼女はわりと欅坂のファンから嫌われていたらしい。金魚の黒目が取れたことを笑いの種にした事でサイコパスと呼ばれたり、"欅って書けない"でリーダーでもないのに出しゃばってる、全員選抜じゃなくなったら真っ先に落とされる、だとか。私はあまり知らないけれど(番組が放送されない地域に住んでいます)だからって言って、まだハタチの女の子に悪口みたいな呼び名がまかり通るのはなんだか違う気がする。

彼女への批判をまとめブログで読んでて一番、ああ、とため息をついたのが「金払ってまで握手してもらおうとは思わない」の一言だった。握手会という金を巻き上げるシステムにおいて、ふーちゃんはCD一枚に値する価値がないとその人は感じたのだな、と。

可愛い女の子はわりとそこら辺にいる。おしゃれをするのは自分のためだったり、世間体だったり、好きな人に振り向いてもらうためだったり様々だけれど、可愛い女の子はわりといる。人口密度が高い都会なら少し外を歩いただけでゴロゴロ居る。はっきり言ってみんな可愛い。ルミネのショップ店員さんもマルイのショップ店員さんもパルコのショップ店員さんもみんなみんな可愛い。109とかやばい。足細い。華奢。普段何食べてんの?花の蜜?ってくらいスタイルがいい。

何に価値を見出すのかは個人の自由だし、いちいちケチつけるのもおかしな話だ。ふーちゃんはその人にとっては街中に居るその子たちと同類でしかないんだな、と少し寂しく感じた。


多分私はふーちゃんについて知れば知るほど、勝手な同情だったり、憐れみだったり、支えてあげたいというような気持ちを持っていたんだと思う。いいなあ、好きだなあ、可愛いなあ、という気持ちを積もらせて。

毎日ブログを更新してること。ずっと端のポジションでも腐らずにダンスを頑張ってること。ふーちゃんが欅坂を好きな気持ち。

それらに混じって、彼女の握手会を完売させたい、というふーちゃんのファン達の気持ちをTwitterで見かけた。

人生で一回くらい、同性の、年下のアイドルと握手してみてもいいんじゃないか。


そんなわけで、今日、ふーちゃんと握手してきた。

幕張メッセの国際展示場5.6のホールの第4部。16時30分から18時の回。着いたのは15時30分くらいだったと思う。早いかなとか思ってたんだけど、とっくに待機列は出来てた。「第4部最後列」のパネルが人混みの中で飛び出てる。個別握手会はまだ人が少ない方だと事前にレポを見てたから、ホールを見下げてまず人の密度に苦笑い。田舎だとお祭りの時くらいしかこんな状態にはならない。階段を降りたら、こもった熱気に上着を脱いだ。夏だったら熱中症で倒れる人が出るんだろうなと予測できる。蒸し風呂状態。

個別握手会であの人数なら全国握手会はどんな風なんだろう。一部のブログだと初詣同然だと書いてあったのだけれど。

握手券の確認後、手荷物検査。その後にすぐさま列に並ぼうとしたら金属探知機で検査をされた。警備員のおじちゃんに「素通りしないで」と慌てたように言われた。すみません、初めてなんです、と言い訳をした。

私はほぼ女しか居ないような現場にしか行ったことがないから、周囲が男性ばかりなのが純粋に凄いなと思った。もちろん周囲の列を見渡せば小学生の女の子達や女子高生や私よりも年上の女性もいた。夫婦で来てるのか、赤子を背負った男女も。男女比は8:2か9:1くらい。男性もイケメンからオタクっぽい人、中学生ぽい少年から中高年まで様々。

男オタは痛バは持たないのだな、という文化の違いを目の当たりにした。ただそれは二次元と三次元での違いかもしれない。代わりにチケットホルダーに推しのブロマイドと自分の名前を入れたものを入れてる人が多いように見うけられた。あと推しの名前が入ったマフラータオルを腰からぶら下げてる人も居て、フラダンスのパウスカートみたい。名札をつけてる女性もいた。認知厨だ。


待ち時間に生誕祭という催しがあって、誕生日が近かったらしい小坂菜緒ちゃんにハッピーバースデーを歌ったのだけれど、後ろに並んでた男の子たちいわく「音源付きは珍しい。金がかかってる。さっすが、こさかな」らしい。周囲の野郎どもの身長で見えなかったので、そういうのがあるんだなあとぼんやり思いながら男達の後頭部眺めてた。

後ろの男の子は握手会の剥がしのバイトをしたことがあるらしく、「×~●担当ね、って言われても中からだとどのレーンとか番号貼られてないし見分けもつかないし覚えられないから、メンバーで覚えるしかないと思ってHKTのメンバーは覚えた」「こっちからアイドルに話しかけちゃいけない決まり」「握手会のバイトは1日で万超えだけど拘束時間が長い」「握手会で得た金を握手会で使うのか、ウケるな」と友達に喋っていて、ああ、楽しそうだな、と思った。感覚が遊園地のアトラクション待ちそのもの。

前のおじちゃんは困ったように「これ一体いつ使えるんですかね」と平手ちゃんの握手券をお仲間らしいおじちゃんに見せていた。握手会でファンに発煙筒を投げつけられた事もある平手ちゃんは多分卒業まで握手会免除されるんじゃないのかな、と私は勝手に思ってる。

スーツ姿のバイトさんに握手券を再び見せて、今度は個別レーンに入った。"齋藤冬優花 第4部 16時30分~18時"のプリントアウトされた文字の下に貼り付けられているオレンジ色の紙。手書きで浴衣とか夏祭りみたいな装飾があって、他のレーンはそういう飾りつけをしてないからふーちゃんが持参したんだな、と理解した。(すぐ近くに印刷された撮影禁止のゴシック体の文字があったから、過去誰か撮ったんだなと思う)

今度は握手券を渡して、枚数を記入してもらって、免許証見せて、また列に並ぶ。

個別レーンに並んでからはすぐだった。人気メンバーは個別レーンに並ぶのもまた長めの列ができてて、目に見える格差が出来てた。全国握手会だとこれがより明確なんだろう。

私が並んだ後、三人くらい男性を挟んで四人女性が並んでたから、ふーちゃんは女性ファンが多いのかな、と思った。(女性アイドルのターゲット層は基本的に男性で、お金を使うのも男の人と相場が決まってるので、ちょっとだけ握手券が売れない一因なのかな、と勝手に思った。私も二枚だけしか買ってないし、でも普通の金銭感覚ならその握手券二枚のお金で数秒の握手じゃなくても映画一本見られるよ?美味しいご飯食べられるんだよ?アディクションのアイシャドウ買えるんだよ?握手したらたった数秒なのに)

パーテーションの中に入ると、浴衣姿のふーちゃんが見えた。顔が小さかった。骨格からして私とは違う。不人気と囃し立てられても彼女もアイドルとして選ばれた人だったんだ、と当たり前の事に気付いた。正直顔が小さいとは思ってなかったから、めちゃくちゃビビった。今泉佑唯ちゃんは写真見ただけでこの子間違いなく顔が小さいと察したから、顔が小さくてもまだわかるけど(実物見たことありません)ふーちゃんの顔が小さいとは心の底から思ってなかった。失礼だけど、正直そこら辺に居る女の子なんだろうと思ってたけど違った。アイドルとして選ばれた顔のサイズだった。ごめん、齋藤冬優花なめてた。

係員に握手券渡して手のひらを見せる。

前の人が終わって、私の番。「二枚です」と係員が剥がしの人に伝える。

差し出された彼女の手を握る。同じくらいの目線の高さ。小さい顔。ふーちゃんの顔が小さい事に気が動転して、正直言おうと思ってたことは言えなかった。

「はじめまして!」

「はじめまして~」

「かわいい~!顔小さいですね!」

「え?そうかな~?ありがとう」

「あの、今度iPhone新しくしようと思ってるんですけど」

「そろそろお時間です」と剥がしの人。

「何色がいいと思いますか」

「えっと、何が?」ふーちゃんは少し困った顔をしてた。うまく聞き取れなかったらしい。

「お時間です」剥がされる。

iPhone!」

「っ、ピンク!」

「わかった!ありがとう!」

「ありがと~」

剥がしに剥がされながら、手を振ってパーテーションの外へ。

想像以上に短くって、二枚でこれか、という落胆と、困った顔をさせてしまったな、というモヤモヤが残った。たった数秒。贅沢な2600円の使い方。

きっと「顔が小さい」も「かわいい」も言われ慣れてるんだろうな、という感じはした。私は美人の謙遜が嫌いなので("顔がいい"は才能だと思ってる)できれば「知ってる」「わかってる」「そうでしょ?」って肯定して微笑んでくれた方が気が楽。美人は美人である事に誇りを持ってほしい。謙遜されても、自分で自分のこと可愛いと思ってるからアイドルになったんでしょ……としか思わない。

ブログ見てます、毎日楽しみにしてます、元気でね、幸せに生きてね、無理しないでね、そんな事をファンとして伝えたかったけど、無理だった。欅坂46齋藤冬優花のほんの一面しか知らない私がそんな事を伝えるのはおこがましかったのかもしれない。それにアイドルという"見られる仕事"とはいえ、見ず知らずの女からそんな感情をぶつけられても気持ち悪いだけだ。

なんでiPhoneの色なんか聞いたんだ、と言われそうだけど、行きのバスの中で次の機種についてめちゃくちゃ悩んでたんだからつい出てしまった。iPhone6を4年も使ったんだし、最近はメルカリもヤフオクのアプリも見てる最中に落ちるようになってしまったから、そろそろ機種変してもいいと思う。アプリが勝手に落ちなきゃまだ使いたかった。

あとふーちゃんごめんね、新しい機種にはピンクはなかったよ。ケースをピンクにするね。きっとそんな事、彼女は次の相手が来た瞬間に忘れただろうけど。



握手終わってカゴに入れていたバッグを手にして顔を上げて真っ先に思ったのが、アイドルってすごい。

すごいんだよ。

私は秋元康大先生がとても苦手で、48グループが恋する女の子の歌を歌ってもどうせ秋元康が書いてるんだろ、欅坂が大人に反抗する子供の歌を歌っててもどうせ秋元康が書いてるんだろ、って、どんな曲聞いても秋元康の顔が浮かぶから何も感じないしむしろ嫌悪感がわくので(300万枚売ったteacher teacherの歌詞は最高に気持ち悪い)握手会も、うわ…(笑)って感じだったんだけど、今回握手をしてもらって、課金しまくる人の気持ちも少しだけわかった気がした。多分、追加で購入できますよ、と言われたらあと二枚くらい買ってたかもしれない。可愛いな、好きだな、と一方的に思っていた相手が確かにそこに居て、笑顔で接してくれる空間(たった数秒だけど)が提供されてる。そりゃハマる人はハマるわ。

チェキや握手やお渡し会やライブが終わった後は明日なんか来なくてもいいと思える多幸感や、明日また頑張ろうと思える充足感に満ちてるのだけれど、今回はただただアイドルってすごいって感情しかわかなかった。私の知らない世界が確かにそこにはあった。

アイドルってすごい。


出口付近でやたら並んでるレーンがあるなと思ったらべりさだった。さすがノンノモデル。


軽くフリースペースを眺めて帰った。17時になっていた。生誕祭企画のスペースでふーちゃんにお誕生日おめでとうのメッセージくらい書いておけばよかったな、と今になって思う。





追記

https://twitter.com/kaibutupu/status/1040932311313727488?s=21

一番最後に握手する、いわゆる鍵閉めというやつで55枚分握手してる人をTwitterで見た。55枚はすごいよね。私はその金あったらsk ⅱをライン買いする。